一身専属的な権利義務

こんな権利義務は、相続できない!
被相続人に属した財産のうち、以下のような被相続人の一身に専属した権利義務については、望むと望まざるとに関わらず、相続人に相続されません(民法896条但し書き)。
個人的な恩恵(法定)

個人的な恩恵に基づくもの(民法に明文あり)。
- 使用貸借の借主の地位(民法599条)
例) 無料で借りたものは、借りた人が死亡したら、返却しなければなりません。
※逆に、使用貸借の貸主の地位は、相続の対象になります。
個人的な信頼(法定)

個人的な信頼関係に基づくもの(民法に明文あり)。
- 代理権における本人・代理人の地位(民法111条)
例)貸金庫を管理する代理権は、本人または代理人のどちらが死亡しても、消滅します。 - 法律行為における委任者・受任者の地位(民法653条)
- 組合員の地位(民法679条)
- 雇用契約上の被用者の労務提供債務(民法625条2項から類推)
例) 雇われている人が死亡しても、相続人は代わりに働く必要がありません。
身分関係

身分関係に強く結びついたもの(民法に明文なし)。
- 扶養の権利義務(民法877条)
- 親権(民法820条)
- 離婚した夫婦の間の扶養的財産分与(民法768条)
特有の技能

特有の技能に基づくもの(民法に明文なし)。
- 非代替性を有する請負契約上の債務
例)絵を描く契約をした画家が、死亡しても、相続人は代わりに絵を描く必要がありません。
個人的な信頼

個人的な信頼関係に基づくもの(民法に明文なし)。
- 身元保証人の責任
※すでに具体的に発生している損害賠償義務は、相続の対象になります。 - 限度額および期間の定めのない根保証契約上の責任
※根保証契約に、限度額または期間の定めがあれば、相続の対象になります。
個人的な境遇

個人的な境遇に基づくもの(民法に明文なし)。
- 生活保護給付の受給権者の地位
- 公営住宅の使用権
※一般住宅の借家契約の借主の地位は、相続の対象になります。