相続分

相続分はどれくらいですか?
相続人が複数人いる場合の相続分は、法律で決められています(民法900条)。
この法律で決められた相続分を、法定相続分といいます。
しかし、法定相続分は、絶対に従わなければならないものではありません。
被相続人が遺言で、各相続人の相続分を指定することもできますし、共同相続人が遺産分割協議で、各共同相続人の相続分を決めることもできます(民法902条1項、907条1項)。
各共同相続人の相続分は、法律にとらわれず、いろいろな事情に照らし合わせて、決めましょう。
法定相続分

法定相続分は、誰が相続人であるかによって、割り合いが決められています。
配偶者と血族の相続人が共同相続人である場合には、誰が血族の相続人かによって、相続分の割り合いが異なります(民法900条)。
また、相続人が、配偶者だけであれば、その相続分は相続財産の全部になりますし、子だけ、直系尊属だけ、兄弟姉妹だけであれば、その相続分はその集まりの中でお互いに等しくなります。
配偶者と子
配偶者と子が、共同相続人であるときの相続分は、次のとおりになります(民法900条1項)。
- 配偶者 - 2分の1
- 子 - 2分の1
配偶者 | 子 |
子が複数人いるときには、子の相続分(2分の1)を、複数人の子の間で等しく分けます(民法900条4項)。
なお、子の相続分に、実子や養子、嫡出子や嫡出でない子(非嫡出子)で違いはありません。
嫡出でない子と嫡出子の相続分が等しくなった!
以前、嫡出でない子(非嫡出子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とされていました。
しかし、平成25年9月4日の最高裁判決にもとづき、平成25年12月5日に民法の一部が改正され、嫡出でない子(非嫡出子)と嫡出子の相続分は等しくなりました(平成25年12月11日に公布および施行されました)。
また、次の代襲原因によって、子が相続権を失っていたときは、その人の相続分を、その人の子(被相続人にとっての孫)の間で等しく分けます(民法901条1項)。
- 相続が開始する前に、死亡していたとき
- 相続人の資格を失ったとき
- 廃除されたとき
配偶者と直系尊属
配偶者と直系尊属が、共同相続人であるときの相続分は、次のとおりになります(民法900条2項)。
- 配偶者 - 3分の2
- 直系尊属 - 3分の1
配偶者 | 直系尊属 |
直系尊属が複数人いるときには、直系尊属の相続分(3分の1)を、複数人の直系尊属の間で等しく分けます(民法900条4項)。
配偶者と兄弟姉妹
配偶者と兄弟姉妹が、共同相続人であるときの相続分は、次のとおりになります(民法900条3項)。
- 配偶者 - 4分の3
- 兄弟姉妹 - 4分の1
配偶者 | 兄弟姉妹 |
兄弟姉妹が複数人いるときには、兄弟姉妹の相続分(4分の1)を、複数人の兄弟姉妹の間で等しく分けます(民法900条4項)。
ただし、被相続人と父母の片方だけが同じ兄弟姉妹の相続分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の2分の1です(民法900条4項但し書き)。
たとえば、被相続人が前妻の子で、残った兄弟姉妹が、前妻の子1人と後妻の子2人である場合、兄弟姉妹の相続分(4分の1)を、さらに次のように分けます。
- 前妻の子 - 両親が同じ
- 後妻の子 - 片親が同じ
両親同じ | 片親同じ | 片親同じ |
また、次の代襲原因によって、兄弟姉妹が相続権を失っていたときは、その人の相続分を、その人の子(被相続人にとっての甥姪)の間で等しく分けます(民法901条2項)。
- 相続が開始する前に、死亡していたとき
- 相続人の資格を失ったとき
- 廃除されたとき
なお、兄弟姉妹に遺留分はありません。
配偶者のみ、子のみ、直系尊属のみ、兄弟姉妹のみ
相続分は、相続財産の全部になります。
相続人が複数いるときには、すべての相続財産を、相続人の間で等しく分けます。
ただし、相続人が兄弟姉妹のみのとき、被相続人と父母の片方だけが同じ兄弟姉妹の相続分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の2分の1になります(民法900条4項但し書き)。
特別受益

相続が開始する前に、ある共同相続人が、相続財産の前渡しをもらうことで、被相続人の相続財産を大きく減らした場合は、それを考慮しなければ、その他の共同相続人との関係で、不公平になります。
この相続財産の前渡しを特別受益といい、各共同相続人の相続分を計算するときは、これを考慮します。
特別受益とは、被相続人から、特別に受けた次のものを指します(民法903条1項前文)。
- 遺言によってする贈与(遺贈)
- 次のことを目的にした贈与
- 結婚のため
- 養子縁組のため
- 生活の費用として
また、この特別受益を受けた人を特別受益者といいます。
特別受益になるのは、いくらから?
裁判所が特別受益だと認めるのは、常識的な範囲を超えてなされた遺贈や贈与です。
常識的な範囲というのは、被相続人の資産状況などによって異なります。
つまり、被相続人の資産状況などから見て、遺贈や贈与の額がそれほど大きくなければ、特別受益には当たらないということです。
なお、特別受益に時効はありませんが、常識的に考えて、あまり昔のものまで持ち出さないようにしましょう。
特別受益者の相続分
共同相続人の中に、特別受益者がいるときは、相続分が、共同相続人の間で公平になるようにしなければなりません。
まず、被相続人の相続財産の価格に、特別受益の価格を加えたものを、相続財産とみなし、このみなし相続財産をもとに、各共同相続人の相続分を計算します。
みなし相続財産 = 被相続人の財産の価格 + 特別受益の価格
このように、計算上で特別受益の価格を相続財産の価格の中に戻すことを、特別受益の持ち戻しといいます。
特別受益者の相続分は、
-
特別受益 < 計算された相続分
特別受益の価格が、計算された相続分の価格未満のとき、特別受益者の相続分 = 計算された相続分の価格 - 特別受益の価格
になり、特別受益者は減額された相続分を受け取ります(民法903条1項後文)。
-
特別受益 ≧ 計算された相続分
特別受益の価格が、計算された相続分の価格以上のとき、特別受益者の相続分 = 0
になり、特別受益者は相続分がありません(民法903条2項)。
なお、特別受益の価格が、計算された相続分の価格を超えていたとしても、特別受益者は超えた分を返す必要はなく、その他の共同相続人は、相続分を再度計算する必要があります。
特別寄与

相続が開始する前に、ある共同相続人が、家業を手伝うことで、被相続人の相続財産を大きく増やした場合や被相続人を長い間、費用を負担しながら療養看護してきた場合などは、それを考慮しなければ、その他の共同相続人との関係で、不公平になります。
この被相続人に対する貢献を特別寄与といい、各共同相続人の相続分を計算するときは、これを考慮します。
特別寄与とは、被相続人の相続財産の維持や増加のため、特別にした次のことを指します(民法904条の2_1項前文)。
- 被相続人の事業に対して
- 労働力の提供
- 資金の提供
- 被相続人の療養や看護
- その他の方法
なお、夫婦や親族のお互いに助け合う義務にもとづく、一般的な寄与の程度では足りません。
また、この特別寄与をした人を特別寄与者といいます。
特別寄与者の相続分
共同相続人の中に、特別寄与者がいるときは、相続分が、共同相続人の間で公平になるようにしなければなりません。
まず、共同相続人の協議で特別寄与者の寄与分を決めます。
もし、共同相続人の協議で寄与分を決められないときは、家庭裁判所に寄与分を決めてくれるように、特別寄与者が請求します。
つぎに、被相続人の相続財産の価格から、この寄与分の価格を引いたものを、相続財産とみなし、このみなし相続財産をもとに、各共同相続人の相続分を計算します。
みなし相続財産 = 被相続人の財産の価格 - 寄与分の価格
特別寄与者の相続分は、
特別寄与者の相続分 = 計算された相続分の価格 + 寄与分の価格
になり、特別寄与者は増額された相続分を受け取ります(民法904条の2_1項後文)。