遺言できる事項

何が遺言できるの?
遺言は、法律で決められた方式を守れば、遺言者が書きたいことを書くことができます。
たとえば、次のようなことを書いてもかまいません。
- 葬儀の方法
「葬式はしないで、海に散骨してくれ」など - 遺訓(遺言による教訓、家訓や道徳的な訓示)
「兄弟で協力しあって家を守ってくれ」など - 介護や扶養の方法
「母さんは介護施設に入れないでくれ」など
このようなことを書くことで、残された家族へ、遺言者の最後の思いを遺すことができます。
もしかすると、相続トラブルを回避することができたり、家族の絆を強めることができるかも知れません。
ただし、これらのことは、あくまで付言事項と言われるものす。
法律で遺言できる事項として定められていないので、法的な効力はありません。
つまり、相続人はこれらのことを、尊重したほうがいいのですが、たとえそれに背いたとしても、何のおとがめもありません。
なお、遺言できる事項は、法律で以下のように限定されています。
相続に関する事項

通常、相続は法律で定められた原則に従います。
しかし遺言することにより、この原則に従わないこともできます。
- 相続人の廃除および廃除の取り消し(民法893条、894条2項)
※遺言執行者の選任が必要です。 - 相続分の指定(民法902条)
- 遺産分割方法の指定および遺産分割の禁止(民法908条)
- 特別受益の持ち戻し免除(民法903条3項)
- 担保責任に関する別段の意思表示(民法914条)
- 共同相続人の間の担保責任(民法911条)
- 遺産分割で受けた債権の担保責任(民法912条)
- 無資力の共同相続人の担保責任の分担(民法913条)
- 遺贈の減殺の割合に関する別段の意思表示(民法1034条但し書き)
財産処分に関する事項

相続に関係のない財産の処分について遺言できます。
- 包括遺贈および特定遺贈(民法964条)
- 受遺者に関する別段の意思表示
- 受遺者の相続人による遺贈の承認または放棄(民法988条)
- 受遺者による果実の取得(民法992条)
- 条件成立前の受遺者の死亡による停止条件付き遺贈の失効(民法994条2項)
- 遺贈の無効または失効の場合の財産の帰属(民法995条)
- 相続財産に属さない権利の遺贈における遺贈義務者の義務(民法997条2項)
- 第三者の権利の目的である財産の遺贈(民法1000条)
- 受遺者の負担付遺贈の放棄(民法1002条2項)
- 負担付遺贈の受遺者の免責(民法1003条)
- 一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
※ 遺言執行者の選任が必要です。 - 信託の設定(信託法3条2項)
- 保険金受取人の変更(保険法44条、73条)
※保険会社への通知が必要です。
身分に関する事項

身分行為に関することを遺言できます。
- 遺言による認知(民法781条2項、戸籍法64条)
※遺言執行者の選任が必要です。 - 未成年後見人の指定(民法839条)
- 未成年後見監督人の指定(民法848条)
遺言執行に関する事項

遺言の執行に関することを遺言できます。
- 遺言執行者の指定(民法1006条1項)
- 遺言執行者に関する別段の意思表示
- 遺言執行者の復任権(民法1016条1項)
- 共同遺言執行者の任務の執行(民法1017条)
- 遺言執行者の報酬(民法1018条)
- 遺言の撤回(民法1022条)
解釈で遺言できる事項

法律で明言されてはいないが、条文から遺言できると解釈されています。
- 祭祀主宰者の指定(民法897条)